90年代初頭、米国を中心とする帝王切開率の上昇に歯止めをかけるために一時流行ったのだが、その結果、何でもかんでも帝切後に経膣分娩を勧める風潮が出来上がってしまった。結局、0.7%-1%程度の患者が子宮破裂のために母児がとんでもない状態に晒されることになってしまい、今世紀になって急に下火になったのである。
つまり、昔のように一度帝王切開したら、次の子も帝王切開で産むというのが安全であるということだ。


でも、万が一、不幸にも子宮破裂したとしても輸血や救急処置、超緊急手術(子宮摘出術)が行える3次救急病院なら母体を救えるらしいので、そういう施設でのVBACなら容認できるという見解が米国で出ている。こういう超優れた施設は果たして日本にあるのかは私は知らない。
おそらくは一部の病院でできるとは思っている。

妊婦さんは、やはりVBACによる成功率の高さ(50-80%)のみならず、1%以下だが、子宮破裂が自分に起こった時にその施設で果たして自分が助かるのかどうか十分に医師に説明を受けねばならないだろう。

私自身は90年代に大学病院でVBACを推奨していた一味であったが、子宮破裂も経験した。輸血量は10000cc以上に及び、子宮を摘出してかろうじて止血した。子宮のみならず、周囲の骨盤の静脈叢まで裂けてしまった。児は救命できなかった。
当時は、このような大惨事はなかなか起こりにくいとされていたし、風潮として、患者さんの希望を極力取り入れ、母体の負担が軽い経膣分娩が推奨されていたのである。
そして、大多数のVBACの成功例では患者さんに喜ばれたのである。

でもどうだろう。大学病院だから母体は助かったのであると、確信を持って言える。個人開業医でVBACをやったら、、、、、、。ご想像にお任せする。

  米国産婦人科学会2004年7月号のPRACTICE BULLETINによるとVBACをしてはいけないタイプははっきりしている。

1.前回の子宮の切開創が縦切りの人(古典的切開やT字型切開)
2.かつて子宮筋腫で筋腫のみの切除手術(筋腫核出術)を経験している人
3.産科医、麻酔医、手術室スタッフが十分でない状況
4.帝王切開歴2回以上で経膣分娩歴がない人

特に3番目の項目は重要であろうと多くの医者は認識していると思うが、意外にVBACがうまく行くことに味をしめていると、ある確率でいつかは痛い目に会う事が想像される。