申し訳けございませんが、まだ自分のブログがありましたのはびっくりです。

ブログ再開と言いながら、B型のせいか、元来、文章や手紙、年賀状、挨拶状、お礼状にはルーズで困ったものです。

知り合いがアメブロを始めた影響で、また自分のを見てみました。

読んでみると、以前の知識がまた、正確に思い出されたりして勉強になりますね。

でも、医学は日々進歩しているので概念や常識がどんどん変わってゆきます。


あああー。産科医がどんどん減ってゆきます。

ただ地道にやってゆくだけで、自分が希少価値になってゆくのが実感され、

一方で責任の重圧につぶされそうにもなります。


今日も5人も生まれた。全員が元気な女の子でした。こんなことって、、、、。

同僚の医師が3人にも増えたので肉体的には楽になりました。

また顔出します。

ああ、もう無くなっていると思っていた自分のブログがまだありました。

止まっているブログなのに、まだ読者登録してくれている方がいる。

やはり、この分野はとても大切なのだと納得。


返事もせず、申し訳ないと思っていましたが、また、勉強したことを

書いてゆきたいと思っています。



4D超音波購入しましたが、まったく診断的には必要性を感じません。

ただ、患者さんたちは大喜びです。完全なる集客用のサービス目的にすぎない

ものに大金かけた自分に自己嫌悪です。

そうです!産科は病気でない分野が多いのですから仕方ありませんと今では

納得するしかありません。また、報告します。


産婦人科医の本音

一般的には我々の間では、会陰部の傷の縫合は、自然に出来た裂傷よりも切開の縫合の方が容易と思われている。

吸引分娩の場合は、児の娩出を急ぐため、かなり裂傷が広がることが予想され、あらかじめ、会陰切開を大きく入れることが多いのだが、それも会陰切開の場合の方が自然裂傷よりも正確に修復出来きるを考えているからである。

会陰切開を行う理由は、

第一に会陰部の裂傷が高度になるのを防ぐ事、第二に出口を広げ難産を防ぐため、第三に胎児心音が安心できないパターンの場合、分娩を急ぐ時

会陰切開の実際的な利点

会陰切開を行うと肛門や肛門周囲の高度の傷が減少する。

骨盤底を支える筋肉や靭帯を保護できる縫合がより容易なので傷の回復が早い。

早産や肩甲難産(胎児の肩の通過が困難な分娩)の場合には新生児の外傷をより少なく出来る可能性がある。

外陰部の上の方(クリトリスや陰唇、尿道)の損傷が減る。

会陰切開の欠点

肛門や肛門周囲の高度の傷の原因となる裂傷が逆効果に大きくなるもしれない、皮膚の引きつれや膣の入り口が狭くなるかもしれない。、傷の痛みが強くなるかもしれない。

しかし、性的機能回復は自然裂傷の場合の方が性交再開時期はより早いのだが、長期的な性交痛には差はないという研究結果が一般的である。

今後の検討課題

経膣分娩は、便失禁、尿失禁と重大な関係がある。これに悩む女性は、信じられないくらい多いのであるが、女性のQOLに影響を及ぼす便の失禁、尿の失禁の率は、会陰切開群と自然裂傷群で差があるのだろうか?



最近、これに関する論文が多い。

この分野は未だに、科学、医学というよりアート的な領域である。

つまり、担当する医師、助産師の経験、考えによって、随分差が出るといえる。

でも。データを重視するべきなので、比較的信頼できる論文、発表(無作為抽出試験による研究)を取り上げると、


Dannecker  et al. Acta Obstet Gynecol Scand. 2004;83(4)’364-368

初産の会陰切開率は、児がこれ以上は胎児心拍数モニタリング上、もう待てないとか、早く娩出しなければいけないと判断した場合のみに施行した時、41%であった。それに対し、このまま自然に分娩したら大きく裂けそうであるからと判断した時にも会陰切開を入れると、なんと会陰切開率は77%に跳ね上がる。

では、会陰切開を入れなかった時に、何%の人は無傷なのであろうか?そう、切開を入れなくも、ある程度は裂けてしまうのは仕方ない。前者で29%は無傷、後者で約10%の人は無傷で済んでいる。

何を言いたいかというと、分娩担当者が、会陰切開を少し制限するつもりで分娩に望めば切開率を77%から41%に減少させることができる。また、無傷で済む率も10%から29%に上昇させることができたということである。

 ちなみに会陰切開を入れないと、分娩時間は約15分程度は延長してしまうことも事実であるので、胎児がこれ以上、陣痛に耐えられない場合、モニタリング上、低酸素状態の悪化を判断した時は、無理せずに会陰切開し速やかに分娩を終了させる必要があることも付け加えなければならない。


別の米国での発表では、会陰切開率は1979年に65.3%だったのに対し、2001年には29.2%にまで減少している。Weber et al. Obstet Gynecol 2002;100:1177-82

こういうトレンドがあることも我々産婦人科医は知っておくべきであろう。

 

 

 


は、大変難しいですね。


特に産科というデリケートな分野は、疾患という意識がご本人にないため、感覚的になってしまうからです。お友達はそうではなかったです、とか、自分は違ったです、とか言うことは何十万分の1の経験に過ぎず、万人に施すべき医療、処置はそういうことを対象にしているのではなく、何がまず一番目にしてあげると確率が高い治療になるか?、効率が良い処置になるのか?ということです。それがダメなら次は何か?ということです。

最近は予想以上のコメントの多さ、反響の大きさにびっくりしています。

もうこれ以上のブログでの話題提供は止めた方がいいかもしれません。事実は事実でも、ご当人にとって100%は絶対にありませんので。

そのうち、きっと行き違いによる間違いや担当医への不信感が出てくる可能性があると私は心配しています。


NYの病院に10日間勉強に行っていました。

あらためて感じたことは、医療にとって大切なことは、自分の少ない経験や技術よりも万人(多くの患者さん)になるべく当てはまる事実があれば、それを吸収して今後に活かすと言う姿勢です。

つまり、EBMです。


先日、私のいる地域の重鎮の産婦人科医の一人が未だに160人の骨盤位分娩で自分のところでは1例も亡くなった児はいないなどと自慢にも聞こえる発言をのたまっていましたが、このまま行くと、そろそろ立て続けに2例ほど亡くなる可能性を指摘できます。

2000年にLancetに発表された2100人のランダム化比較試験で、十分吟味された骨盤位分娩でも80人に1人は亡くなっていますから。20人に一人は新生児集中治療室で重篤で厳重な管理、治療が必要になっています。こういう信頼に足る事実を患者さんにお話しできるか、提供できるかが今後の良い医師の姿勢と感じます。

こういう事実の前に、例えば、あの病院は最近でも逆子には経膣分娩をしてくれるらしいからいい病院だ、きっと名医だ、とか、私の姉2人は逆子でも無事に経膣分娩したのに、などという感想は、もはや事実を覆す程のインパクトはありません。

結果的には安全な骨盤位分娩は歴史上たくさんありましたので、患者さんとの十分な話し合いが必要となるわけですが、これまたロシアン ルーレットよりはまだマシか、という感じです。

患者さんがいくら骨盤位の経膣分娩を希望しても、もはやそのリスクを受け入れられる施設、医師がいなくなってきているのが現状です。

 

それと前回のさまざまな意見ありがとうございます。母乳という話題を提供した私も良くなかったかもしれません。まだ、EBMが通用しない、あるいは、解明されていない分野ですね。医学というよりアートという分野かもしれません。


いつも遅れて申し訳ないですが、コメントいただいた方にはきちんとお返事するつもりでいます。







一般的に見て、女性が1年間にわたるような明らかな精神的な抑うつ症状に苛まれている人口比率は、各データを集計すると、先進諸国では7%-9%程度である。


妊娠中の精神症状の罹患率はどうだろう。

MED-LINEという世界の医学文献情報のデータベースによると、妊娠後期の12個の研究の平均では

約13%である。

やはり、女性の場合、ホルモンの作用が、精神状態に影響していると言える。

そう、思春期、妊娠中、産褥期、そして閉経前後である。


妊娠中、出産後の不安定さは、一時的な可能性が強く、夫、家族のサポートで乗り切ってほしいものだ。



EBM(証拠に基づいた医学)という観点からみれば、効果は認められないそうである

母乳率や母乳期間という点からそういう見解なのである。


しかし、母乳という関心、心の準備という点からみれば、その点は重要である。

なぜなら、今回、米小児科学会において、母乳栄養のメリットがずいぶん明らかにされたからである。


読売新聞より、

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news_i/20050307so11.htm


簡単に言うと、生後6か月まで乳児を母乳のみで育てることを強く求める勧告を発表した。

勧告は、米小児科学会誌2月号に掲載されている。


母乳の利点として、


乳幼児の感染症、糖尿病、肥満、ぜんそくなどの発症頻度が減少する。乳幼児の脳の発達が促進される。

母親の乳がんや子宮がん、閉経後の骨粗鬆(こつそしょう)症の発症頻度の低下。


今回は最新の研究成果をもとに母乳栄養は、母子双方に有益であることを強調した。


私の総合的な見解はと言うと、妊娠中の乳首の刺激は、子宮収縮を起こすのでお勧めできない。また、乳房のマッサージも効果が証明されていないのでお勧めできない。


妊娠中にマッサージをするよりも、むしろ、分娩後に頑張ればよいのだと納得して、お産の後に早めに赤ちゃんに接するようにして、母乳の授乳時間と吸わせる回数に制限を与えないことが母乳栄養の確立に重要であることが一方で証明されている。


骨盤位はこの時期に全体の3%程度にまで自然に減少しているが、この妊婦さん達には3つの選択が考えられる。


1. 帝王切開術による分娩

2. 骨盤位外回転術で頭位に直して陣痛待ち

3. 骨盤位の経膣分娩


3つ目の骨盤位娩出術はもはや下火で、児のリスクが高く現代の産科医療には受け入れられにくいので除外。(2000年にLancet.という一流医学雑誌で26カ国の共同研究の結果が発表されたから)

よって、1つ目の選択的帝王切開か2つ目の外回転術にしぼられる。


今の日本では、1つ目の最初から帝王切開するのが最も一般的だ。

2つ目の外回転術って何かというと、超音波で、児の胎位と胎盤、羊水量などを確認しながら、医者が両手で妊婦のお腹を触りながら児の頭、背中、臀部を順に回して、頭位に戻すことである

成功率は、欧米で約60%前後、当院では40-50%ぐらいである。

経産婦で成功率はすこぶる高い。また、羊水がたっぷりしている妊婦も回しやすい。


よく他の施設で、37週以前に外回転術を施行して、「我々の外回転術は成功率がとても高い」と自慢しているところがあるが、はっきり言って、ズルである。満期前(37週未満)に成功しても、また、逆子に戻ってしまう率も低くないのである。


外回転術の成功後は、しっかり、NST(胎児心拍モニタリング)をして、児が元気であることを確認すれば、妊婦は帰宅して、自然陣痛の発来を待ち経膣分娩を目指すことができるのだ。心配なら、その場で、分娩誘発を開始しても良い。

一方、外回転術が不成功なら、その場で、帝王切開術にすればよいのである。


日本でも、近いうちにこの骨盤位外回転術という手段を希望するかどうかを患者さんに提示するのが標準になるのかもしれない。

帝王切開率を減少させることができるという意味で、外回転術は非常に有望で恩恵のある処置、技術と言えそうだ。

歯科医にさえあまり認知されていないことがある。

それは妊婦の抜歯の怖さである。通常の削ったり詰めたりの歯科治療なら問題とはならないが、抜歯をすると、妊婦の場合、約60%ぐらいの確率で菌血症(全身の血流に一旦、菌が回ること)となる。全く健康で、心疾患のない妊婦なら問題は起こさない。しかし、女性の6%程度には、生活に全く影響のない小さなものも含めて僧帽弁閉鎖不全が隠れているとされる。これらの女性が菌血症になると、血流に乗った口腔内の細菌が心臓内の心内膜に感染を来たし感染性心内膜炎を起こす可能性が上昇する。この感染性心内膜炎は血栓を作り、脳などの臓器に飛べば脳梗塞となる。子供の頃から、先天性心疾患で苦労してきた患者さんなら、風邪や虫歯にならないよう、ずいぶんと注意され、また、気をつけてきた人生であったはずだ。感染性心内膜炎は、未治療なら約70%ぐらいは死に至ると言われている。

 よって、妊婦の抜歯の際は、その妊婦に心疾患が無いかどうかは重要であり、もし、あれば、ペニシリン系抗生物質を処置前、そして処置後に1回ずつ投与が必要とされる。これは、スタンダードな処置として、1997年に米国心臓学会のガイドライン(JAMA 1997;277’1794)で定められている。


1ヶ月前、帰省で当院にいらっしゃった32週の妊婦さんが、10日以上も左の背中が痛い、痛いと訴えており、私も全く無力で困ってしまい、大学病院の内科医師団に相談した。そして、大学病院の内科のみならず産婦人科連中も巻き込み「わからん、わからん。何だろう。」と入院させてまで困っていたが、ついに数日前に循環器の専門医が、その妊婦さんの心臓の超音波により、心臓内の弁に血栓らしき瘤ができているのを診断し、さらに脾臓という臓器に梗塞巣を発見し原因が究明できた。心臓から血栓が脾臓に飛んで血管が詰まりその組織が壊死を起こし痛がっていたのである。母体の生命の危険のために、赤ちゃんは早産だが、帝王切開で出してしまって、そして心臓の大手術が始まることとなったのである。

原因は、問診によると妊娠初期の抜歯である可能性が高いそうである。果たして、抗生物質は使ったのであろうか?妊婦自身は、心臓疾患の既往も自覚もなかったそうなので、抗生物質は使わなかったのかもしれない。


私は医師になって15年だが、妊婦の抜歯にまつわる感染性心内膜炎は、これで2人目である。






PS) 前回、帝王切開の母体死亡の統計をお示ししましたが、帝王切開のリスクは、母体死亡のみならず、

出血量や癒着、膀胱などの臓器損傷、血栓症の発生頻度、入院期間の長さや痛みの程度等さまざまにいたるのですが、あたかもそれを無視して母体死亡のみをリスクとして見てしまうような誤解を与えたことをお詫び申し上げます

 


 

 

これは我々にとって永遠のテーマである。

シンガポールでの分娩に関する研究で、膨大な数の分娩を対象としたものがある。

 

10万人の経膣分娩で何人の母体が亡くなるか?

10万人中3.2人だそうだ。

では、計画された予定の帝王切開術で、10万人中何人の母体が死亡するか?

なんと10万人中2.8人とずいぶん少ない

では、帝王切開は母体にリスクとならないのか?

 

そうではない。緊急の帝王切開術では、10万人中なんと30人以上母体は死亡するという

やはり、臨時の準備では、いざという時の対処が遅れる、または、それだけ母児ののリスクが高まった段階での緊急の帝王切開なのであるから、合併症の可能性も高まるのであろう。

 

帝王切開は、伝家の宝刀であり、児を安全に分娩させる究極の手段であるが、何らかの緊急で帝王切開となった場合には、明らかに母体の合併症は上昇すると思わなければいけない。ところが、何月何日に帝王切開します、という予定帝王切開では、母体リスクは経膣分娩と同リスクで済むということがわかった。